「学校事務員さんには、可愛がってもらったほうがいいよ」
教員になったばかりの頃、私は先輩からそう教えられました。
学校という職場では、授業だけをしていれば仕事が終わるわけではありません。
出張、休暇、給与、旅費、備品、文書、各種手続き……。
教員が学校で働く上で、事務職員の方のお世話になる場面はたくさんあります。
だからこそ、
「学校事務員さんとは良い関係を作っておいたほうがいい」
という意味だったのでしょう。
実際、長く教員をしていると、親切で頼りになる事務職員の方にもたくさん出会いました。
一方で、私は長年の教員生活の中で、こうも思うようになりました。
「学校事務員だからといって、全員がいい人とは限らない」
当たり前のことなのですが、初任者の頃の私は、そこを深く考えていませんでした。
「可愛がってもらう」ことを仕事の基本にしてはいけない
初任者の頃は、職場の人間関係について右も左も分かりません。
先輩から、
「この人には逆らわないほうがいい」
「事務室にはちゃんと顔を出したほうがいい」
「事務の先生に可愛がってもらえ」
などと言われると、
「そういうものなのか」
と思ってしまいます。
もちろん、職場の人間関係を良好にすることは大切です。
しかし、問題なのは、
「相手に気に入られること」と「仕事をきちんとすること」が混同されてしまうこと
です。
誰かに気に入られなければ仕事ができない。
誰かの機嫌を損ねたら職場で生きていけない。
そんな状態になってしまうと、仕事そのものよりも「人の顔色」を気にするようになります。
これは教員に限った話ではありません。
どんな職場にも、
- 面倒見の良い人
- 親切な人
- 困ったときに助けてくれる人
- 自分の仕事に誇りを持っている人
がいる一方で、
- 人によって態度を変える人
- 新人に厳しい人
- 陰で人の悪口を言う人
- 自分の立場を利用する人
- 周囲をコントロールしようとする人
もいます。
つまり、
「事務職員だからいい人」「ベテランだから正しい」ではない
ということです。
私が教員生活で学んだこと
長く学校で働いていると、いろいろな人に出会います。
本当に親切で、
「分からなかったら何でも聞いて」
と新人を助けてくれる人もいます。
そういう人には自然と感謝したくなります。
一方で、
「新人なんだから、これくらい分かるでしょ」
という態度の人もいます。
さらに厄介なのが、表面上は親切なのに、裏では人の評価をしていたり、誰かの失敗を面白がったりするタイプです。
こういう人に対してまで、
「可愛がってもらわなければ」
と無理をする必要はありません。
むしろ大切なのは、
「この人は信頼できる人なのか?」を自分で判断すること
だと思います。
学校は「閉じた人間関係」になりやすい
学校という職場には独特の部分があります。
一般企業と違い、毎年のように大きく人が入れ替わるわけではありません。
同じ学校に長く勤務する人もいます。
そのため、学校独自のルールや人間関係ができあがっていることがあります。
「昔からこうだから」
「みんなそうしているから」
「前の先生もそうしていたから」
という言葉が出てくることもあります。
もちろん、昔から続いていることすべてが悪いわけではありません。
しかし、
「昔からそうだから」という理由だけで、新しく入った人が合わせなければならない
という状態になると、かなり疲れます。
特に初任者や若手教員は、
「自分がおかしいのかな?」
と考えてしまいがちです。
でも、そうとは限りません。
「自分が悪い」と思い込まないこと
職場で人間関係がうまくいかないと、
「自分のコミュニケーション能力が低いのかな」
「もっと相手に合わせるべきなのかな」
「自分が我慢すればいいのかな」
と考えてしまいます。
私も教員生活の中で、そう考えたことがあります。
しかし、今になって思うのは、
職場の人間関係は相性も大きい
ということです。
どんなにコミュニケーション能力が高い人でも、すべての人と仲良くできるわけではありません。
逆に、あなたが悪いわけではなくても、なぜか相性が合わない人はいます。
だから、
「誰からも好かれる教員にならなければいけない」
と考える必要はありません。
必要なのは、仕事をするための最低限の人間関係を保つこと。
それ以上は、無理に好かれようとしなくてもいい。
私は長い教員生活を通して、そう考えるようになりました。
あなたの人生はあなた自身のもの
教員をしていると、
「学校を辞めるなんて、とんでもない」
という空気を感じることがあります。
特に長く教員をしていると、
「せっかく公務員になったのだから」
「安定しているのだから」
「定年まで続ければいい」
と言われることもあります。
しかし、人生は仕事だけではありません。
毎朝、職場に行くことがつらい。
職場の人間関係で毎日消耗する。
仕事が終わっても学校のことが頭から離れない。
休日も疲れて何もする気になれない。
そういう状態が続くのであれば、一度立ち止まって、
「この働き方をこれから何年続けたいのか?」
と考えてみることも必要です。
あなたがあなたらしくいられる場所
自分に合った職場を探すために、異動をお願いすることもできます。ストレスを抱えたままその場に留まる必要はありません。
どうしても、教員という仕事が合わないならば、転職という選択肢もあります。
これは私自身が教員を長く経験してきたからこそ言いたいことです。
今まで培った、教員の仕事で身についた能力は、学校の外でも使えます。
例えば、
- 人前で説明する能力
- 保護者や地域とのコミュニケーション
- 文書作成
- スケジュール管理
- 行事の企画・運営
- 多数の仕事を同時に処理する能力
- トラブルへの対応力
- チームで仕事を進める能力
- パソコンを使った事務作業
などです。
本人にとっては「当たり前の仕事」でも、他の業界から見ると十分な経験になる場合があります。
だから、
「教員しかやってこなかったから、転職できない」
と最初から決めつける必要はありません。
学校の外に目を向けてみる
ここで大切なのは、
「今すぐ退職しましょう」という話ではない
ということです。
まず、自分の経験がどんな求人につながるのかを調べてみる。
それだけでも十分です。
転職サイトに登録すると、
「世の中にはこんな仕事があるのか」
「教員経験を活かせる仕事もあるんだ」
「思っていたより条件の良い求人がある」
など、新しい発見があります。
逆に、
「やっぱり今の仕事のほうがいい」
と気づく可能性もあります。
それなら、それでいいのです。
大切なのは、
「学校しか知らない」という状態から、一歩外の世界を見ること
だと思います。
元教員だからこそ伝えたいこと
初任者の頃に言われた、
「学校事務員には可愛がってもらえ」
という言葉。
今振り返れば、その言葉そのものが完全に間違いだったとは思いません。
人間関係を大切にすることは重要です。
ただし、
「相手に好かれること」を優先しすぎる必要はありません。
いい人もいます。
本当に助けてくれる人もいます。
一方で、残念ながら「この人とは距離を置いたほうがいい」と感じる人もいます。
それは学校事務員に限りません。
教員にも、管理職にも、事務職員にも、企業の社員にも、いろいろな人がいます。
だからこそ、
「誰にでも好かれなければいけない」ではなく、「信頼できる人と適切な距離で仕事をする」
ことが大切なのだと思います。
そして、もし今の職場でそれが難しいのであれば、転職という選択肢を持っておいてください。
転職する気がなくても、求人を見る価値はある
「辞めるつもりはないけど、ハローワークに行く、転職サイトを見る」
これも私はアリだと思います。
なぜなら、選択肢を知っているだけで気持ちが変わるからです。
「ここしかない」と思っていると、職場で嫌なことがあったときに逃げ場がありません。
でも、
「いざとなれば別の仕事を探せる」
と思えるだけで、少し気持ちが楽になることがあります。
まずは求人を眺めて、自分の市場価値を確認してみる。
それから転職するかどうかを考えても遅くありません。
教員を辞める・辞めないを決める前に、まず「学校の外」を見てみる。
長く教員をしてきた私から、若い先生方に伝えたいことの一つです。

